生徒会室は整然と片付けられていた。

 イギリスの指示の下で書類は整理され、引継ぎももう終了している。新学期からは俺達以外の学生がこの部屋の主のなる。

 日本は腰を屈め、生徒会長の机の下を探っていた。

「君は沢山、この部屋の写真を撮ったんだろ」

 引きこもりだった日本を無理やり連れ出した俺が、学園で最初に案内したのはこの部屋だった。イギリスの子分にさせるつもりはなかったけれど、一応挨拶させないと彼の学園生活に支障をきたすと思ったからだ。

 今考えれば、あんなことをしなければ良かった。

 日本とイギリスは出会ってしまい、俺を抜きにして恋に落ちたのだから。

「よく漫画同好会の部昇格を直談判しに来ましたからね」

 日本は応接セットのテーブルの下を覗いていた。

「宥めようとするイギリスさんに噛み付いて、大喧嘩もしましたっけね」

「うん」

「ええ、本当によく怒鳴りあいました」

 でも、俺は覚えている。

 喧嘩の後で君達はキスをしていた。

 長いすで居眠りしていた俺に気がつかないで、仲直りの長い長いキスを交わしていた。

「それから、アメリカさんが私を励ます為に、よく青いドーナツを下さいましたね」

「え?」

「色は怖かったですが、まぁ、甘くて美味しかったですよ。

 あと、あのときの言葉は励みになりました」

 ドーナツ。

 よく俺がおやつに食べていた、裏のパン屋のドーナツ。

 何回か日本にもあげた記憶はあるけど、何か会話をしたのかはよく覚えていない。

  俺は何を言って日本を励ましたのだろう。

 額を軽くはじいて思い出そうとしたが、記憶は思うように再生できなかった。首をひねる俺を撮った日本は、大きく伸びをした。

「ここにはないようですね、次に行きましょうか」

 

 

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