それから、俺達は校内を歩き回った。

 校舎裏の倉庫は漫画同好会が勝手に占拠した部室だった。

 開け放たれた窓からは草の匂いがした。

「綺麗なもんだね。あの同人誌コレクションどうしたの?」

「もちろん、新居へ運びました」

 会員に下級生のいない同好会は昨日をもって解散したのだという。漫画も画材も片付けられた空間は寂しかった。

「イギリスもよく手伝ってたよな。

 あいつがあんなに絵が描けるなんて、俺知らなかった」

「ええ。意外でしたね。

 本当はストマンも描いて欲しかったのですが」

「そういって生徒会長を引き込んで部にするつもりだったのかい?」

「ええ」

 何かのイベントの前に、日本はイギリスやフランスをこの部屋に連行して手伝わせていた。

 

『たとえ部でなくても、生徒会長は生徒の活動を支援しなくてはいけないからな』

 

 最初に駆り出されたとき、まだイギリスは日本と付き合っているわけではなかったと思う。普段はえばり散らして、気に入らない生徒活動は鼻で笑い飛ばしていたイギリスにしてはおかしいと思ったけれど、今考えれば下心があったのだろう。

「ああ、アメリカさんにもお世話になりましたね」

「俺が?」

 彼の好む絵も描けない、万事が雑な俺はアシスタントを頼まれたことはなかった。

 ただ寝転がって漫画を読んで、ご飯時にはお相伴に預かっただけだ。

「ええ。

 ご飯やお菓子を買ってきてくださったし、ポーズをつけてくださったし、あと夜は見回りの目をくらませてくださいましたね」

「そうだっけ?」

 そんな些細なことはすっかり忘れていた。

「そうですよ。

 立派なメシスタントでした」

 カシャリ。

 また、シャッター音が響いた。

 

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